取り調べの最中に女性警官が聞き耳を立てようとするくだりが本当に無駄にあるが、コメディパートでは意味なく裸にさせたかったんだろうなあと思う。エロ(限りなく女性蔑視的な)と軽口程度の差別的なジョークが時代的に封じられてのタケちゃんの笑い。それでも身体的にフリークスな錦鯉長谷川と空気階段もぐらを起用しているのは間違っていない。まだギリ許されているハゲとデブネタ。
たけしを吐かせるために、刑事同士が痛めつけ合うくだらないコントは『みんな〜やってるか!』でも同じようなくだり(ムチで叩きあう)があったので、タケちゃんの笑いの感性は、あの頃で止まっている。
前半の暴力、たけしの腕の振り(ボクシングスタイル)はいつも感心する。抜いたらすぐに撃つ、当たり前だが「映画」としては圧倒的に正しい銃の使い方も最高。二人の刑事に虐められている際のたけしの凶悪な面構えも大好き。カッとなっても手錠で動けないのが、また良い。80前でもちゃんと怖い。イーストウッドかたけしか、未だ簡単に人を殺せそうな別格オーラ。
役者は『首』からの続投組多し。浅野と大森は最近のたけしのお気に入り。薬で捕まっても律儀に使い続ける仁科貴。たけしは芸人と二世の役者に異様な愛情がある。現代劇の中村獅童はイマイチ。歌舞伎役者はヤクザだと品がありすぎる。
テレビでバカを演じていたビートたけしの反動で映画を撮っていた北野武が、そのテレビでお笑いができなくなった(必要とされなくなった)ため映画でもテレビでもない「配信」という場で上手いことガス抜き(実験)をしている。ビートたけしと北野武の両性具有的な作品。まだまだ「映画」を撮れるよ、次は暴力に全振りして来年ぐらいに頼むわ。