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ファーゴの七のネタバレレビュー・内容・結末

ファーゴ(1996年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

コーエン兄弟作品を初鑑賞。
正直なところ、見終わった段階ではなぜこの作品がこんなにも世に評価されているのかピンと来なかったため、何か重要なシーンを見逃したのかと思ってしまった。

考察サイトをいくつか回って納得したのが、"この映画は裏切りにフォーカスしている。それは他人事だと思って観ている観客自身に対しても。"といった内容の考察。これをコーエン兄弟は、彼ららしいユーモアたっぷりに私達へと突きつける。

じゃあ具体的にどこが、かというと最序盤に出てくるあの「本作は実話に基づいて制作された」というテロップシーン。
嘘である。
ここで私はまんまと本作を実話だと思い込み、カーテンを体に巻きつけて発狂する妻ジーンの描写にブラックジョーク効いてるなと苦笑いしたり、職質された時に躊躇いなく警官を撃ち殺したゲアみたいな人間が実在するって怖い、殺されたカップルの女性の方が頭をかばって腕に怪我しているのリアルだな、とか最後の方法相棒の死体を木材破砕機にかけてるのって現実にあるんだとか感想を抱くわけだが、実は全てコーエン兄弟によって作り出された嘘だったわけである。

この作品のニクい所が、実際に起きてもおかしくないレベルの嘘で固められていること。この絶妙なさじ加減のおかげで私はまんまと騙された。
観た直後はあまりピンと来なかった本作だが自分なりに噛み砕いてみると、とんでもない苦みと独特の後味の悪さが尾を引く作品に化ける。
なるほど、ファンが高く評価するわけだとやっと得心がいった。
これを機に他のコーエン兄弟作品も観てみようかなと思う。

余談だが、木材破砕機で死体を分解しようとした人間は実在する。
現実は小説より奇なりとはよくいったものだ。
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