【座った思い出】
公園のベンチなんて何年も座っていない気がする。
昨年、陽気が良くなった春頃、ランチにお弁当でも買って公園で食べようかと思って会社の近所の公園を見たら、ベンチは既に満席で諦めたことを思い出した。
公園のベンチに一番よく腰掛けていたのは、高校時代付き合っていた彼女とだ。
お金があるわけじゃないので、喫茶店にたまに行くけど、天気が良ければしばしば公園のベンチでたわいのない話をずっとしていた。
たまには城址の公園の屋根があるベンチでも話をした。
僕の田舎には、まだあの公園はあるし、新しくなったみたいだけどベンチもまだある。
考えてみたら、ベンチは過酷だ。
軽い人もいれば重量級の人もいる。
雨風に晒され、寒暖差、かんかん照り、排気ガス、ホコリ、子供が跳ねたり。
そんな中、ベンチに座る人にもドラマがそれぞれあるのだ。
日本にはそのうち夏と冬だけ、つまり、四季ではなく二季になるなんて言う人がいる。
そしたら、過度に暑かったり寒かったりして、公園のベンチに座る人が少なくなるかもしれないと思うと少し悲しい。
この「at the bench」は、そんなベンチにまつわる人々のほんの一瞬を切り取って、その背景を考えるような作品になっている。
そこが楽しいし、切なくもある。
佳作だと思う。
好きな作品。