サム太郎

満ち足りた家族のサム太郎のレビュー・感想・評価

満ち足りた家族(2024年製作の映画)
3.5
展開もオチも結構ずっと読めてるんだけど人物設定の開示方法や反復するモチーフの積み重ねが丁寧で… 最後まで見せる作りでよかった。人間の感情や気分がどう揺れてどう表に出るかの描き方や、最初と最後で反転する登場人物の思考の流れの見せ方がとても自然 人って気を揉む事態が好転し気分が上向きになると本当に急に食事が喉を通るようになったりするんだよね、この映画ではそれがとてつもなく醜悪に映るのですごい。3回目のお食事会、心の中で自ー首!自ー首!って最悪コールしながら見てたけどラストで全部どうでも良くなったね。疲れたね。まあ、見てる人たぶんみんなそうなると思っただろうけどね。
ありとあらゆる場面において要求される競争が生む激しい格差社会と、父を家長とし長男を絶対とする制度の中で歪められた人々は世代の積み重ねの果て、その圧力についに耐えきれなかった子どもたちの歪みは末端から家系図を破壊し、家族の行末は取り返しのつかない破滅へと向かう。車は富と権力の象徴だな。原作はオランダの小説ですでに何度か映像化されているらしいが(いずれも未読未鑑賞)あまりにうまくマッチしていたのでオリジナル脚本かと思ってしまったな。そんで私は今回"동서"という韓国語を覚えた。調べたらこれは「夫の弟の妻」を指す言葉らしいんだけど、この言葉を、長男の若い再婚相手の女性が自分よりひとふた周り年上の義妹に対して用いる場面があり… すごかった。字幕上ではただ名前を呼び捨てにするという翻訳になっていてそれはそれで迫力があったが、そもそも日本語には存在しない上説明するにも複雑な言葉… というかもはや概念なのでどうしようもないけど、そんなものに固有の呼称を用意するなよな…
サム太郎

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