アフター6ジャンクション2の
宇多丸さん×吉田大八監督によるトークショー付き試写会にて鑑賞。
老人が食事を取るだけの日々が繰り返されるだけとも言える序盤なのに…なぜこんなに面白く、なぜこんなにも画面から目が離せなくなるのだろうか。
おそらくというか確実に主演の長塚京三さんの色気とチャームとくたびれた可愛らしさだろう。
そんな日々が、彼の前に現れる人々が「敵」というワードと共に不気味さを纏い始める後半は整理が全くつかない、つけられておらず魅力的な異様さを放っており、時にホラー映画よりもゾッとさせられる恐怖表現やどうしようもなく笑えてしまうコメディが展開される。
現実なのか、夢なのか。
その境目を失って以降は出口の見えない自己言及が形を持って、会話となって行われていき、まさに人の頭の中の様々な思考を映像でそのまま食らったようだった。
トークショー内でも「この作品は認知症の映画ではない」と言及されていたが、
人が虚構に迷い込む(もしかしたらそれが病になる)要因としての孤独が描かれていたように思えて非常に楽しめた。
孤独が蓄積された記憶を呼び起こし、その記憶に救いを求めてしまう人の虚しさ。
しかし、その記憶も客観視する理性がその記憶を悪きものへとも変わる事もある。
一筋縄では整理できない複雑な自分自身との向き合いを抽象表現で再現されていくクライマックスは、圧巻。
敵も戦争を経験していない、思えていないことに対するコンプレックスなのだとしたら、ちょっとすごいかも。
今年の映画館初めの一本目がこれでよかった!