れおん

敵のれおんのレビュー・感想・評価

(2025年製作の映画)
3.8
遺言書もほとんど書き終わった。残高に見合わない長生きは悲惨だから。君もあと何年持つか計算してみたらいい。不思議と生活に張りが出るから。妻を亡くし、長年独り暮らしの元大学教授・渡辺儀助は、寸分の狂いもない完璧な日常を送っていた。そして、「敵」はある日、突然現れた。

『桐島、部活やめるってよ』吉田大八監督。『きみの鳥はうたえる』『宮本から君へ』『佐々木、イン、マイマイン』『ドライブ・マイ・カー』『窓辺にて』四宮秀俊撮影。長塚京三主演・瀧内公美・河合優実・松尾諭・松尾貴史。

敵はゆっくり近づいて来ない。突然襲ってくる。
厳かな生活、しきたりを重んじる。フランス文学に精通し、大学教授時代から続く教え子との親密な関係性、今も親しまれている。すべてが「完璧」な人の落とし穴。利口だからこその単純さ。包み隠す欲の顕在化。『裏窓』のように主人公の四季を覗き、『箱男』のように主人公とともに夢の世界に落ちてゆく。

汝の隣人を愛せよ。人生は恐ろしい。自我の完全体を追い求めると、いつしか自己矛盾に辿り着き、身体が自らを抱えきれなくなる。考えるな、感じろ。
れおん

れおん