尿道流れ者

青春デンデケデケデケの尿道流れ者のレビュー・感想・評価

青春デンデケデケデケ(1992年製作の映画)
4.8
大林映画とはこうあるべきといったシュールな映像ではじまり、デンデケデケデケとベンチャーズのパイプラインの例のフレーズが開始5分で飽きてしまうほど執拗に繰り返される。ここでニヤッと出来たらこの映画に乗れること間違いなしで、その後のコミカルで切ない青春劇に最後までひたってしまう。

ストーリーはベンチャーズに憧れた青年が友達をかき集めてバンドを組み、文化祭に出るという王道そのものだがやっぱりこういうのは好き。
香川の田舎町の風景は綺麗で、合宿でのキャンプやバンドの野外練習など青春の匂いと町の空気が絶妙にマッチしている。
出てくるギターも、いまやマニア向けとなったビザールギターの王道グヤトーンだったりとニヤッとしてしまう。
バンドを組むと練習の予定が合わなかったり、簡単な曲のはずなのに全く合わなかったり、スタジオ代が高かったりとなかなか苦労も多いが、ここで映るバンドの姿はこうありたかったと夢にみた楽しいことばかりのもの。

この映画の青春はほとんど落ち度の無いものなので、ご都合主義に映るかもしれない。でも、この映画のナレーションからこれは主人公の回想であって、青春には楽しいことから苦いものまでたくさんの思い出があるが、人に話したかったり、昔話として語りたいものは誰だって楽しい思い出ばかりのはずだ。だから、この映画が楽しいばかりの回想であってもおかしくはない。
人の苦い思い出なんてつまらない本当のことよりも、嘘でも楽しい話が聞きたいし、思い出すなら楽しいことを思い出したい。
ご都合主義なんてちんけな言葉が追いつかないくらい熱く、優しく、楽しい思い出がこの映画にはつまっている。