ごんす

フィクショナルのごんすのレビュー・感想・評価

フィクショナル(2024年製作の映画)
4.2
またまた黒沢清を連想する映画だと思いワクワクドキドキしたが『Chime』は酒井善三監督の過去作『カウンセラー』から影響を受けているそうな(観れていない)
それでいて本作は『Cloud クラウド』とやたら共通する所があったりレジェンドと新人気鋭の作家の世界観が交わっているという事実だけでご飯3杯くらいいける。

興味を持つ対象や表現したいものが似ていたとしても当然のように細かいアプローチは違う。
本作のディープフェイク映像製作の過程やそれによって起こってしまう出来事はあまりにもリアリティがあって苦しい。

リアリティについて、わりとどうでもいいと話していた黒沢清(確か濱口竜介との対談)との違いを感じる。
もし黒沢清が全く同じ話をやるならクローネンバーグ作品みたいなアンダーグラウンドな組織の存在を登場させそう。

本作『フィクショナル』の主人公は今まで描かれてきた承認欲求だったりアイデンティティの確立に悩む若者とは違うフェーズにいる。
虚実ない交ぜの世界にどっぷり浸かってしまい“僕は、今本物ですか?”と問いかけることだけがかろうじて自分であろうとしている印象を受けた。
今の自分にはこれを笑い飛ばすことは難しかった。

自分は職場で若い学生のスタッフと働くことが多いが凄くしっかりしていて自分よりもよっぽど大人だなと思う子がいる

しかしそんな子がこの映画に出てくるディープフェイクによく似たデマを信じてしまっていたり、めちゃくちゃ差別的なことを言う政治家を何かやってくれそうで面白いと言っていたりする。
その一方で○○構文とネットで揶揄されているような政治家のことはヤバイと言っていてどこで線引きがされているかが不思議だった。

勿論どの党の誰を支持しているからといって人間性が決まるわけではない。
ただ、話しているとネットの使い方があまりに極端なのではと思った。
まとめサイトで見た情報などをパワーワードとセットでインプットしてそこから先は調べたり考えたりしていないようだ。

自分は彼の人間性は好きだし若者を頭ごなしに否定したくなかったのでとりあえずいつも使っている検索エンジンをたまにログアウトして使ってみると面白いよと伝えた。
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