Omizu

青幻記 遠い日の母は美しくのOmizuのレビュー・感想・評価

3.8
【1973年キネマ旬報日本映画ベストテン 第3位】
『秋津温泉』『儀式』などの撮影監督をつとめた成島東一郎の監督デビュー作。一色次郎の同名小説の映画化作品で、『儀式』に出演していた賀来敦子、戸浦六宏が本作にも出演している。

奄美大島の美しい撮影が見もので、流石『儀式』や『心中天網島』で美しい映像をつくりあげた撮影監督だけあり映像の美しさは超一級品。青が印象的な素晴らしい色彩。

賀来敦子は決して演技が上手いとは言えないものの、薄幸の母を体現している。毎日映画コンクールの女優賞も納得の存在感。

過去と現在をシームレスに語り、更に時系列順でもないが、それぞれに繋がりが持たせてありなかなか上手い脚本。

惜しむらくは田村高廣演じる稔の現在がイマイチ見えないところであるが、最後の戸浦六宏の「今幸せじゃないんだな、その年になって母のことが忘れられないんだもの」というセリフでなんとなく納得。

話としてはありがちではあるが、脚本が巧みで、撮影も素晴らしい。DVDになっていないのはもったいない秀作。
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