真魚八重子

情熱なき犯罪の真魚八重子のレビュー・感想・評価

情熱なき犯罪(1934年製作の映画)
5.0
すごく変な映画。アヴァンタイトルが突拍子なさすぎて、違う映画を観始めたかと思った。「自堕落に生きている男には、怒りに燃えた地獄の三姉妹が待ち構えている」という字幕とともに、様々な男の身勝手ケースが陳列されて、まさに地獄の女といった異界の存在が飛び上がってくる。ビルなどの映像がインサートされるのもシュールさを増している。

本編は法スレスレの詭弁で勝訴を勝ち取る有名弁護士が、踊り子の女と別れて新しい女性と付き合おうとする話だが、この踊り子となかなか手が切れない。昔の男とまだ切れてないかのようにでっちあげて、彼女に責任をなすりつけようとするものの、死ぬと言われると名声に傷がつくかもしれないし、なんとかなだめて穏便に済ませたい。しかしそうはうまくいくわけもない。
電話のやり取りのカットバックが目まぐるしくて、ちょっと見かけないスピードなのも何事かと思う。弁護士と踊り子が揉みあううちに銃の暴発が起こるが、ここでの踊り子への演出、カメラの位置も気持ち悪い。伏線とはいえ奇妙で、現実のトラブルが起こった時の人間の不自然な動きに似ていてゾッとする。
弁護士の心の葛藤は映画的でわかりやすくていい。
真魚八重子

真魚八重子