工場での製造過程の観察映画でしかないのだが、ワイズマンのように空間の中にいる人間のコミュニティを描写するのでもなく、本当に作業による商業製品の製造フローの運動だけに注視することによって、その機械的作業の中に含まれる映像の音楽的快楽を捉えるあたりが慎ましくも見事な現代映画のアプローチといえるか。
高級車の製造についてのスペクタクルな作業の労働から一転し、2部で壁一面に時計が並ぶショットからその無機質な空間の中にいる人間の作業がリズミカルに捉えられる。地味ながら一つ一つの丁寧な手作業の工程が、1部と違った、従業員同士のささやかな会話とともに聞こえてくるミニマルながら朗らかな空間を際立たせる。時計の秒針の静けさと打って変わって、3部ではシンバルの製造による金属音が強調されるという具合で、全体にわたって視覚から聴覚へと意識を仕向ける編集がシーンの構成含めて実践されるのが興味深い。