脳天貫通ペンギン

奇麗な、悪の脳天貫通ペンギンのネタバレレビュー・内容・結末

奇麗な、悪(2024年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

終始精神病院(洋館?)の中で動きも少ない中、70分を超える独白を聴き入らせる表現力に圧倒されました。

本編を通して髪を結わえた時は時折口角もあがり滑らかな口ぶりの一方で、髪をほどいた時にはやや険しい顔つき。
放火や一家離散を仕向けた行動について、正当化する感情と苦しみ耐える感情、ふたつの感情が話の中で表情や髪型を通して綺麗に区別されているようで、やもすれば人格がふたつ宿っているようにも感じた。

彼女の行動は社会的に許されるものではなく"悪"としながらも、それらを正当化する気持ちが奇麗と形容させたものと感じた。

独白の最後に「話は全部嘘」と翻したものの、その後の「私はまだ終わってない」という言葉や、踊り場の「真実」という名の絵画と独白の内容が似通っていることから、全部嘘という言葉が嘘なのだろうと察した。

冒頭で結われていた髪は、エンディングではほどかれていた。街を颯爽と歩く姿は同一なようにも見えるが、心の内には大きな変化があったのだろうか。

独白の内容や医師からの手紙を読んでからの心境の変化からして、彼女は損得抜きに寄り添ってくれる人間を欲しつつも、そんな者は存在しないのではないかと悲観的になっていた。そして最後、彼女はほんの少し救われたのではないかと感じた。