くろいひと

ゴダールの決別のくろいひとのレビュー・感想・評価

ゴダールの決別(1993年製作の映画)
4.3

ゼウスがその身を変えて人妻を寝取るというギリシャ神話をモチーフにしながら、キリスト教的な神の存在論を展開し、またそれがゴダール流の映画論にもなっている大傑作。

宗教を失ってしまった現代人が神を語る(騙る)ためには、絵や言葉ではなく映画でなければならないという意思。
イコンはイマージュに、言葉は音になって。
フィクション(宗教をふくむ)による伝達可能性が問われる。
この時期のゴダールらしく実験的手法は洗練され、美しい自然のなかで登場人物たちがおりなす重層的なものがたりに目をうばわれっぱなし。

原題の"Hélas pour moi"を『ゴダールの決別』とはまた残念な。
くろいひと

くろいひと