都市の陸橋を海辺に見立てる冒頭、吹いてくる風が海風にしか見えなくなってしまう。それからのシークエンスは音楽に合わせた編集が気持ちいい。
というより、映画全体を通して、音声とサイレント映画的な画面が、どちらかに従属するでもなく、影響し合う。
編集点も動線も練られた長回しの中で、映ってる人の生き生きと輝く身体性に涙が出た。

記録

夏休み

石口祐実のいえーーーい！一発で、何度もあの行き当たりばったりの夏休みが肯定される。あのラストシーン以前の多くは、映画に従順な監督が私淑する映画たちに支えられた、ある意味、巧妙に捏造された瞬間（＝映画）が記録されている。一方ラストシーンは、カット前後の映画ではない純粋な瞬間が映画にプラスして記録されている。これを映画外と定義すると、おそらく冒頭のマリと乗客の電車内のやりとりも映画外にある。これらは映画の束縛からの事実上の解放であり、なぜか映画以上に感動を引き起こす。いえーーーい！に限っては、映画のお終いと重なっているから余計にグッとくるものがある。映画の可能性の1つは、映画外をも映画にしてしまうことで間違いないと思う。『人魚のうた』に関しては、映画の可能性は発見というよりも監督によって引き出され、偶然と共犯者たちによって生まれている。