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シックス・センスのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

シックス・センス(1999年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

かつて担当していた患者に銃で撃たれた高名な精神科医のマルコム。彼は複雑な症状を抱えた少年コールの治療に取り掛かる。コールには特殊な第6感があり、その能力のためにイジメられたり、恐怖におののいていた。マルコムは自身の夫婦関係を修復できずにいたが、コールを治療しながら自らの心にも安息を見いだしていく…。

ネタバレ禁止の代表作。
恐らく、本作のラストに訪れる衝撃は、たった一度きりしか味わえない。
しかし、その辻褄合わせに2度3度見ることになるサスペンスの傑作。

患者に襲われた事件以来、夫婦の仲は悪くなり、マルコムは妻アンナから無視される日々が続いていた。
アクションやコメディ映画では見られないブルース・ウィリスの孤独に静かに耐える紳士な姿は珍しく、彼の演技力を証明している。(引退が非常に惜しまれる)

やがて関わった少年コールから「僕は死んだ人が見える」とマルコムは告白される。
当時、天才子役と謳われたH・J・オスメント君の恐怖と哀しみを帯びた視線も物語を盛り上げる。

しかし、マルコムはコールが幻覚症状や妄想に悩まされていると疑い、信じない。
だが、キラという死んだ少女が「母親に殺された」とコールに訴える。
妹も同様の被害に遭いそうなことから、コールはマルコムに相談し、キラの妹を救う「死者の願い」を叶えるべく動き出す。

時折、コールの前に現れる幽霊が、見る者を脅かすものの、さほど恐いとは感じない。
それがホラーとしては難点だが、死者の生前の無念や尊厳を尊重する物語は、宗教を超え、格調が高い。
また、共に孤独を抱えたマルコムとコールの歳の離れたバディが真相を解き明かす謎解きサスペンスに引き込まれる。
2人の行動で妹は救われ、キラは無事に成仏でき、それぞれの心境にも変化が訪れていくのは、父と子に似た愛をも感じる。

これを機に死者を救えたことから、自己肯定感と自己有用感を持つコール。
同時に人生をやり直そうと再起を決意するマルコム。
事件を通して2人は「生きる希望」を見いだすのだ。

しかし、この物語は大団円とはならない。
事件解決後、マルコムが部屋へ戻ると泥酔したアンナが。
マルコムは彼女に話しかけるが、「なぜ私を置き去りにしたの…」と呟く。
その時、結婚指輪が床に落ち、拾おうとすると…、アンナの指にはしっかりと指輪がはまっていた。
指輪の無い自分の指を見て、彼は自分自身が既に死んでいることを知る。
アンナはマルコムに冷たくなったのでも無視をしているわけでもなく、夫が世に存在していないことを受け入れられないだけだった…。

マルコムは患者に撃たれたあの日、とっくに命を落としていたのだ。
患者を救えなかった後悔の念と、妻を残してしまった未練が残り、まだこの世を去れないでいたところコールと出会ったのだ。

コールの言葉、「幽霊は見たいものだけが見える」「彼らは自分が死んだと思っていない」が重要な伏線。
思えば、彼の眼を見て話していたのはコールだけだったことに気づく。
マルコムが登場した全てのシーンが脳裏をよぎり、そうだったのか!と驚く一方で、妻と「これから」を生きる希望が絶たれる悲しい結末である。

死に気づき、コールを救えたことに満足感を得たマルコムは、妻アンナに別れの言葉を告げ、現実を受け入れながら成仏していく。
それは、自分が生にしがみつくのを止めることで、自分を身近に感じていた、思い出に囚われた妻に、新たな人生を送って欲しいというマルコムの願いに見える。

これぞ真の意味での「尊厳死」なのかもしれない。
1度目よりも2度目3度目の鑑賞の方が、心に染み入るキャラクターの心情を発見できる。
複数回の観賞にも耐えうる脚本と演出の強度を持つ稀有な作品である。
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