欲求不満という悪夢、悪夢的な欲求不満──サイレント映画脱構築マンことガイ・マディンの長編デビュー作。艶めかしくグロテスクな幻想奇譚だった。『世界で一番悲しい音楽』におけるイザベラ・ロッセリーニの義足は『四十二番街』などにおけるバズビー・バークレー的脚線美の批判的援用だったが、『ギムリ・ホスピタル』における看護婦の脚はジャン・ヴィゴ『ニースについて』へのオマージュだと思われる。室内を白い羽毛が舞う『新学期・操行ゼロ』からの引用と思われるシーンが別にあるからだ(違ったらゴメンナサイ)。他にもフランスのサイレント映画の形跡がそこかしこに見られる。ぶらんこと脚からはアベル・ガンス『鉄路の白薔薇』も想起。長編デビュー作から既に強烈な世界観を築き上げていてあっぱれだった。ハマる人はとことんハマりそうな沼作家。私はそんなに。
本作は日本でVHSだけ出ている。『アークエンジェル』のVHSは持ってるのでこっちもいつか手に入れたい。