TaiRa

心のともしびのTaiRaのレビュー・感想・評価

心のともしび(1954年製作の映画)
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何か凄い話だな。凄いの話だけじゃないんだけど。

いきなりモーターボートぶっ飛ばしてるオープニングからしてヤバい。007の始まり方みたい。湖の事故から医師の死に至るまでのスピード感ある場面転換、無駄のない登場人物紹介。病院で同時展開する各人物の行動と合流のさせ方が手際良過ぎる。この映画は主要人物少ないけど、ダグラス・サークって群像劇撮らせても凄いんだろうな。道楽息子のロック・ハドソンが、自分のせいで人徳のある医師が死んだと知り罪悪感に押し潰され、その贖罪の為にと、医師の未亡人ジェーン・ワイマンに付きまとったらそのせいで彼女が事故に遭って失明。不幸のピタゴラスイッチ。死んだ医師の姿は一切描かれず、聖人のような人間として提示。ある種の神。その神の教えをハドソンに伝えるオットー・クルーガーもまた人間離れした存在感。ワイマンに陰ながら人生を捧げると誓うハドソン。無私の献身、すなわち愛。失明したワイマンにハドソンが接近する浜辺の演出が良い。スイスに舞台を移してからも凄かった。目が治らないと知ったワイマンの絶望を表す台詞と呼応する暗い室内、彼女の娘が一つ一つ電気を点けて部屋を出て行く切実さ、絶望の極地にいる彼女の元へやって来たハドソン=光。人生最高の夜に繰り返される「この夜が永遠に続けばいいのに」がラストの台詞に繋がるの美しい。手術室で天を仰いだハドソンに微笑んだクルーガーはやはり神の代理人に見える。
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