三隅炎雄

ひとりぼっちの二人だがの三隅炎雄のレビュー・感想・評価

ひとりぼっちの二人だが(1962年製作の映画)
4.4
水揚げを拒み置屋から逃げ出した吉永小百合と、彼女を護るため奔走する浅草のチンピラやくざ、ヌード劇場の芸人、ボクサーら。秀作『上を向いて歩こう』に続く坂本九・小百合・浜田光夫・高橋英樹・渡辺友子出演の青春群像劇で同じ舛田利雄が監督した。
前作同様ベースは所謂不良少年もので、そこに舛田は坂本の魅力を更に活かせるよう、前年『用心棒稼業』でも見せたミュージカル趣味を加えて、表現はより自由になっている。魚河岸に向かう朝のトラック群をカーレースの如く猛然と描いて青春の躍動を表現してみせた『上を向いて歩こう』に対し、こちらは吉永・坂本をはじめ主人公たちが浅草の街の中をとにかく走って走って走り抜けるその肉体の輝きが美しく、感動的だ。走る俳優たちと同時に浅草の街の表情を生き生きと捉えることにも成功して、街の映画としても第一級と言える。浅草の映像記録としても、これは大変貴重なものだろう。
脚本は熊井啓・江崎実生。チンピラやくざ浜田光夫の兄貴分が小池朝雄。翌年の『泥だらけの純情』と違い、こちらはずっと悪人のままだから安心して見ることが出来る。
三隅炎雄

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