千年女優

マネーボールの千年女優のレビュー・感想・評価

マネーボール(2011年製作の映画)
4.0
ヤンキースのワールドシリーズ三連覇が象徴するように金満球団と貧乏球団の差が顕著だった2000年代初頭のMLBにあって、貧乏チームの代表格ながら01年、02年と連続でシーズン100勝を達成したアスレチックス。その原動力となった統計データを重視するセイバーメトリクス理論を導入して注目されたGMビリー・ビーンを描く伝記映画です。

マイケル・ルイスのノンフィクションを原案に、脚本に伝記映画の名手アーロン・ソーキン、監督に『カポーティ』のべネット・ミラー、主演ブラッド・ピットで映画化された作品で、スポーツの弱小チームを描いた物語でも絆や勝利にフォーカスするようなパッシブで分かり易いカタルシスではなく、静的でじっくりした作品となっています。

しかしそれが故のじわじわと込み上げてくる高揚感が本作にはあります。試合自体はもちろんそれ以上にデータをこよなく愛するタイプの野球ファンには特に。旧態依然とした狭い視野が覆い隠していた物事の本質を、データを駆使して理路整然と暴き、訝しがる周囲を結果で説得し徐々に世界を変えていく。そんな静かな情熱のある一作です。
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