三樹夫

コマンドーの三樹夫のレビュー・感想・評価

コマンドー(1985年製作の映画)
4.3
大統領を暗殺させるため娘を人質に取られたメイトリックスは飛行機から何とか脱出。飛行機が現地に着く11時間の間に何とか娘を取り戻すというストーリーはあるけど、シュワが行く先々で暴力をふるい軽口を飛ばすという異様な作品になっている。冒頭ですんごい角刈りに担いでる丸太と同じぐらいぶっとい二の腕したシュワが出て来て、私は毎回正気を失った状態でこの映画を観ている。人の命の軽さが尋常ではなく、シュワが通った後はチリひとつ残らんという破壊っぷりをみせる。
ベネットのトリックとか何の意味があったんだという、細かいことは全く頭の中に入ってこない作り。一応メイトリックスの部下が次々死んだらカービー将軍がメイトリックスのとこ行くだろうから後つけてメイトリックスの居場所突き止めようっていうのはあるけど。娘の居場所を突き止めるにあたっての手掛かりもガバガバもいいとこでよくたどり着けたなという。
ただ、そういう細かいところを吹き飛ばすに余りある暴力と異常なセリフ回し。島に殴り込みかけるのなんか、娘の居所も分からぬ内に映るものすべて破壊して殺戮ショーで皆殺しにする始末。10分に1回ぐらいの割合でシュワが暴力をふるい死人が出てジョークを飛ばす。バイオレンスの前後にジョークを挿入することによって緊張と緩和の効果を得られるというような難解すぎるシュワ理論の到達点がこの映画。シュワは脚本家にバイオレンスの前後にジョークを入れろという指示を飛ばしていたとのことだが、天才と狂人は紙一重というか、つーか狂人。追い打ちをかけるように日本語吹き替えでは平田勝茂先生が翻訳というよりもはや造訳しだしてとんでもないことになっていた。

ベネットは役者が急遽変わったため、バーノン・ウェルズに合わせた衣装を作る暇がなくピチピチになっているが、面白いことになっているので功を奏して作品にプラスになっている。ラストのタイマンは予算が尽きたので20世紀FOX本社ビルの地下で撮影。娘を人質にとられているという状況が、来いよベネットの一言で完全に無くなるという映画史に残る革命が起きている。誰かを人質に取られて満足に戦えないという理由付けで主人公の戦闘力を下げて相手とイーブンにするというダメ映画がどれだけあることか。時間は約90分とタイト、メソメソしたウェットが一切無いハードドライなのも良い。
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