独立後インドの宗教事情を親英米知識人層の視点から皮肉った軽妙洒脱な都会派社会風刺喜劇。インチキ聖者（ババ）の正体を暴こうとボンクラ気味のオッサンたちが策を練るというまぁ要は『トリック』よね。日本でもサイ・ババのブームとかあったなー。

俺自身もそうですがサタジット・レイがこういう映画も撮る人というイメージは全然なかったので、おそらく日本の多くの映画ファンは観たら驚かれるんじゃなかろうか。ちょっとした切り貼りアニメで人間関係を説明するとか、ババの声を録音したオープンリールを早回しで再生とか、諸々洒落てます。

ババ信仰を風刺する内容ではあるが最後は逃走するインチキ・ババが妙にカッコよく見えるというのは面白いところ。60分程度の映画なので詳しく描かれることはないが、あのババ、あんな仕事してるぐらいだから職なし金なしカーストありのどん底から舌先三寸で這い上がった苦労人なのではないかな。

そう思わせるあたりインド庶民のバイタリティや機知の力を信頼している感があるので、滑稽だが気持ちの良い快作となっております。ババ役の怪演も楽しかった。

インドの宗教事情も階級意識も全く知らんので、何をどう風刺してるのか正直分からないけど、ベースは古典的ハリウッドの文脈で観せてくれるので面白かった。
悪党の大嘘つきが、一番知性も教養もあって魅力的なのはなんか良かったな。