マサミチ

秋立ちぬのマサミチのレビュー・感想・評価

秋立ちぬ(1960年製作の映画)
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父親が亡くなり、母親と共に田舎から東京の親戚の元に来た少年の出会いと別れ。

如何にも良妻賢母な雰囲気の乙羽信子演じる母親が住込みで働く旅館の客(加東大介)と不倫して、少年を親戚に預けたまま駆け落ちする思いっきりドライな展開に唖然としたが、成瀬巳喜男監督って【おかあさん】なんかにしても甘いタイトルの割りにハードな設定だったもんな。

旅館の女将の娘と少年は仲良くなるが、少年が大切に飼っていたが東京に来るなり無くしてしまったカブトムシが少年期のイノセンスを象徴する重要なアイテムになっている部分が非常に秀逸で、少女に見せるためにカブトムシを東京で探しまくる少年の姿は健気で、やがて田舎から送られてきた果物の中に混入していたカブトムシを発見した少年は少女にいち早く見せようと走るが、その時に少女は……。

昭和35年当時の東京の街並みや子供たちの遊び(少女はダッコちゃんを抱えている)が新鮮で、日本映画にこんな瑞々しく時に残酷さも含んだ佳作があったのだ。
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