【1972年キネマ旬報日本映画ベストテン 第5位】
「日本のクロード・ルルーシュ」こと斎藤耕一監督が韓国映画『晩秋』(1966)をリメイクした作品。萩原健一は当初助監督として参加していたが、主演俳優の降板により主演に抜擢された。
成熟している岸恵子と未熟な萩原健一、その二人のキャラクターそのものが映画内と見事にマッチ。まさしくルルーシュ『男と女』そのままの詩的で上品な大人のメロドラマになっている。
訳アリの螢子を演じた岸恵子が素晴らしい。ただいるだけで溢れ出る色気と陰。対照的に、まるで少年のような朗。二人が惹かれ合う過程を魅力的に描いている。
なぜ惹かれ合うのか、そこは掘り下げない。しかし必然だと思える。そこに理由なんてない。
何がいいのか言語化できないという点も『男と女』と同じ。詩的で上品な大人のメロドラマ、それに尽きる。惹きつけられる一作。