ワンコ

犬の生活のワンコのレビュー・感想・評価

犬の生活(1918年製作の映画)
4.5
【惨めな人間】

喜怒哀楽は人間が表す普遍的な感情だ。

チャップリンの作品は、一義的に喜劇とされるが、そこには世相が大きく関わっていることが多く、悲しさや、怒りに満ちたもの、不条理があったり、それは過去も現代も、きっと未来にも通じる人間社会のサガのようなものの気がする。

このチャップリン・フォーエヴァーで上映される作品について、公開年を追ってレビューを書いてみたいと思う。

「犬の生活」は、第一次世界大戦終了直後に公開された作品だ。

チャップリンの作品には、何度となく「Dawn(夜明け)」という字幕が映し出されるが、この「犬の生活」は、この「夜明け」で始まり、暗い戦争の時代が終わったのだという意味も込めたのではないかと思える。

しかし、戦後の混乱や貧困は社会を覆い、決して夜明けというわけではなかったはずだ。

ただ、そんな中で、人間のサガを思い切り皮肉って笑ってもいるのだ。

放浪者ことチャップリンが大きな犬に襲われている子犬を助ける場面がある。
この犬たちは、人間社会のメタファーに違いない。
しかし、子犬はチャップリンに恩義を感じていたのか、財産を掘り当てる。
まるで、日本の民話にもありそうな話だし、花咲か爺のようでもある。
人間は恩義を感じなどしないのに、犬は恩義を感じると更に皮肉っているようでもある。

「犬の生活」とは、実は、英語では「惨めな生活」という意味で使われる。

この作品は、人間の有り様こそが実は惨めじゃないのかと問いかけているようでもある。
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