Kientopp552

暁の出撃のKientopp552のレビュー・感想・評価

暁の出撃(1954年製作の映画)
3.0
奇策の戦略爆撃作戦、白黒映画でよりそのドキュメンタリー性が高まるが、今日的視点で言えば、戦略爆撃の問題性が言及されていない

 ダム爆破のための奇抜な爆弾を実用化したのはイギリス人の技師であり、その奇抜さは何となくイギリス人らしい。その名を「ヴィッカーズ・タイプ464爆弾」というが、要するに空から投下する爆雷である。

 では、何故このような爆弾が必要であったか。イギリス空軍は既に「戦略爆撃」の計画を立てて、ドイツの軍需産業を基盤から破壊する考え方を、大まかな案であったが、早くも1937年(既に第二次世界大戦開始前!)には持っていた。こうして、そのドイツの軍需産業の中心の一つが「19世紀以来のドイツ帝国の武器製造所たる」ルール工業地帯であり、ここに水と電力を供給していた貯水ダムを破壊することがこの「戦略」の一つの目標として計画された訳である。

 ただ、貯水ダムには魚雷防御網が二重にかけられているので、ただの水雷攻撃ではこの目的を達することが出来ない。高高度からの爆撃では爆薬量の大きい爆弾でなければ、意味がないが、そのためには、このような重々量の爆弾を運搬できる重々爆撃機が出来ていない。そういうところから、上述の魚雷網を跳び越えてダムの壁に到達し、そこから壁伝いに沈んで水圧で爆発する、コード名「Upkeep」爆弾が開発されたのであった。

 映画の終わりに、作戦後帰って来なかった戦友飛行士達の部屋をカメラが鎮魂するかが如くに無言で時間をかけて回るシーンがある。誠に印象的である。一方、ダム決壊による洪水のために亡くなった人の数は、合計で少なくとも1.600人以上と言われている。その中には、東欧・ソ連からドイツに連れて来られていた強制労働中の若い女性達約700人も含まれている。ここに哀悼の意を表する。
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