「冷たい晩餐」「われらの子どもたち」「満ち足りた家族」として3回リメイクされたオリジナルのオランダ映画、というかヘルマン・コッホの小説「冷たい晩餐」の最初の映画化。
映画版どれも結末が違うのが面白い。
原作はまだ読んでいないのでわからないが、このオランダ版はほぼポールの視点でミステリーのように進み、後味は悪いものの、解釈は見る側に委ねていた。

監督は「カラーパープル」の脚本や「アドルフの画集」の監督もつとめたメノ・メイエス。

政治家の兄セルジュと元教師の弟ポール、それぞれの妻バベットとクレアがディナーで会するがそのディナーは楽しいディナーではなく、子供たちが犯した犯罪にどう対処するかの話し合い。

ポールはうだつの上がらない夫で世の中を斜に構えて見ていてメンタル的にやや難ありに見えるが、彼だけが倫理観と家族を護りたい気持ちの間で揺れまくっている。
他の三人は話の間にすでにどっちかに思考が寄っている。

ポールは無意識だっただろうが、教師時代はウケ狙いの過激な言動で問題視されて職を失っていて、その思考や態度が息子マイケルに気付かぬうちに影響していたのかも？と匂わせる。
そう思うとポールの苦悩や自責の念はさらに深くなるだろうし、妻クレアの態度も腑に落ちない。
これはどっちに転んでも悩みは続くだろう。

意外な人が意外な立ち回りをするなぁ…と思いきやそうでもないのかも(はっきりはしない)。
ポールはずっとジレンマに悩まされるんじゃないかと思う。
不快すぎるが、ほぼポール視点なので彼の胃の痛さが伝わってきて、大人の倫理観・苦悩というよりはポールの苦悩みたいな映画だった。

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