NEMO

ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールとトリュフォーのNEMOのレビュー・感想・評価

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芸術家の理念の拠り所とは、その生涯の内でどれほど揺れ動くものだろう。
確固たるものを避けつづける少数派の態度は、細く灯る蝋燭に似て心許ない。しかし敬虔な火は、政治的立ち位置という荒野にいつまでも無関心でいられるだろうか。

トリュフォーはマティスを引き合いに、闘争を避ける芸術家像を好意的に説いたが、自然の中の安寧を良しとする芸術にはむしろ職人的な愛、そして凍結された喜びさえ感じてしまう。
作品を通した主義主張と痛烈な自己矛盾の中にだけ、ようやく現実を見出すゴダールの態度に、揺れる詩情の炎が見えた。

二者を時代の振り子運動の様に切り取ったとても明快なドキュメンタリー。
批評の時代、夢の再構築に捧げた青年期。
中心に立つレオの眼差しが、意図せず批評的なのだ。めまいがする。
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