すき焼きごはん

キツツキと雨のすき焼きごはんのネタバレレビュー・内容・結末

キツツキと雨(2011年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます


神経のよわい内気な25歳映画監督の田辺くんと田舎に住み木を切ることを生業にしてるおじさんの、ゾンビ映画の撮影を通してのコミュニケーション。

自分の作品を少しでも良く撮りたいと思うが、やる気があまりない周りの人に気を遣ってしまい、「仕方ない」で微妙なクォリティの撮影を続ける田辺くん。そんな田辺くんの書いたゾンビ映画の台本をワクワクしながら読み、撮影のお手伝いをしてくれるようになるおじさん。クリエイターにとって純粋に自分の作品を好きだと言ってくれる存在って嬉しいと思うが、田辺くんにとってその初めての人がおじさんだった。
おじさんの方も、田舎に住み、妻が死に、息子とは喧嘩が絶えない日々。そんな中でゾンビ映画の撮影という非日常の出会いは救いだったかもしれない。双方の煮詰まった状況に対し、お互いの存在がそれを打破するものになる。

〜〜

お話は進み、ラストシーン。お祭騒ぎの映画撮影が終わり、日常生活。おじさんがいつものように木を切っている場面で切なくなった。おじさんの人生でもうあんなお祭騒ぎな日々は無いかもしれないし、間違いなくあの日々は戻ってこない。その一方で、今度は海で映画撮影してる田辺くんが、おじさんが作ってくれた椅子を持って歩いている。田辺くんだけがおじさんとの映画撮影を糧に、どんどん前に進んで羽ばたいていく。
思い出を力に次に羽ばたいて行く世代と、様々な思い出を反芻し、ゆっくりと死を待つ世代。その違いが切なく、しんみりとした余韻に浸れる映画だった。