メトディ・アンドノフ『炎のマリア』と並んでブルガリア映画史を代表する一作。なんと家屋炎上家族全滅展開が全く一緒という背筋の寒くなる共通点があるのだが、そこに至るまでの過程は全く異なる。物語はバッキンガム宮殿の衛兵交代式から始まり、成人した主人公がブルガリア時代を語るという形で展開していく。その構造は先日観たタヴィアーニ兄弟『サン★ロレンツォの夜』と共通しており、ブルガリアの文化(≒実際の記憶)と子供から見たファンタジックで可愛らしい妄想世界が融合した不思議な語りになっている。映画の大半は"黒の叔父"と呼ばれる叔父さんの結婚式に割かれている。準備をしたり踊ったりと賑やかだがどこか不穏な空気が漂うなど、確かに文化や歴史をミクロ視点から知るという面では最適だが、描写の過剰さになんだか疲れてしまう(Cute but dullというレビューに感動した、私もこれくらいシンプルに生きたい)。