千年女優

プラトーンの千年女優のレビュー・感想・評価

プラトーン(1986年製作の映画)
4.0
アメリカの中流階級の家庭に生まれて大学に通うなど恵まれた生活を送っていたクリス・テイラー。貧困層占める軍の在り様に憤りを覚えて大学を中退し、志願してベトナム戦争に赴いた彼が、想像をはるかに上回る悲惨な戦争の現場に慄いて自らの短絡的な正義感による決断を大きく後悔していく様を描いたオリバー・ストーン監督作品です。

自身もアメリカ陸軍の特殊部隊に所属してベトナム戦争を経験したストーンの代表作で、民主主義と共産主義というイデオロギーの雌雄を正義をかけて決するという一見崇高な理念で行われる戦争の現場が如何に残忍で非人間的であるかを彼自身が見聞きした虐殺・強姦・麻薬乱用・同士討ちといった非道な行為の数々の描写で表現しています。

文明の中期には秩序なく乱立する勢力争いに終止符を打つための所謂「天下統一」の戦いが必要な時期があるとし、国際社会においてもまた然りと20世紀の後期まで多くの人が信じて命を賭しました。しかしそれは幻想であったことを残酷に提示し、「思想統一」ではなく「多様性」こそ次なる道とその向きを一変するきっかけを映す一作です。
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