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世界最強の格闘技 殺人空手のisopieのレビュー・感想・評価

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極真会館の記録映画『地上最強のカラテ』がヒットして東映が便乗した作品。技の見せかた、殴る蹴る跳ぶ効果音、菊池俊輔の音楽など、山口監督の劇映画とまったく同じテイスト。まさにドキュメンタリーとフィクションのあいだのケッサク。

怒濤のごとく駆けるサイの群れと獲物を求めるバッファロー・弁慶のカットバック、両者はいざ戦うのかと思いきやナレーションが告げるのは「マムシだ!」。素材さえあれば、どんなものでも活劇空間に仕立てる山口和彦の本領発揮の瞬間。

文学青年の青さと反権力の鈴木則文、戯作者精神の野田幸男と、作家性の濃い監督を横に並べると山口和彦の特異さが際だつ。主義主張よりもひたすらカッコいいアクションと笑いの見せ場で観客を楽しませることに専念してきた山口こそ、泣く・笑う・握るの東映イズムを最も体現した監督なのでかもしれない。

スケバン、カラテ、SF、マンガ、ポルノ、ドキュメンタリー……山口和彦に撮れない映画はないのではないか。山口和彦がこれまで映画ファンに語られてこなかったのは、すなわちプログラム・ピクチュアの職人監督を語るむずかしさであり、山口和彦こそはその究極の監督なのではないか。
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