色彩と構図に凝りに凝ったフィックスの撮影が父親と出会うくだりで崩れてゆき、手持ちキャメラはぶるぶる震えて揺れまくり、構図もお構いなしにふたりの顔のアップを交互に映しだす。
とりすました虚飾を剝いで現実に向きあうヒロインの心の揺らぎの表現としてこのルックの変異は秀逸。
戦乱のシリアから亡命した看護師のいうとおり、たしかに平和な国の都市生活者ならではの悩みのお話ではある。
「リッチーと知りあう前はなにをしてたの?」あれだけ家柄や出自にうるさそうな姑さんが、嫁の前職を知らないなんてことがあるだろうか。まあ、それだけ孫の出産マシンとしてしか見なしておらず、嫁本人にはまったく関心がなかったのかもしれないが、少々現実離れ。