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レッドクリフ Part Iのnoteのレビュー・感想・評価

レッドクリフ Part I(2008年製作の映画)
3.9
天下統一という野望に燃える曹操は80万の兵力を使い、怒涛のごとく敵国を攻める中、立ち上がった二人の男がいた。一人は劉備軍の若き天才軍師、諸葛孔明。もう一人は孫権軍の知将、周瑜。二人は、その巨大な勢力に立ち向かうため、連合軍を結成するが、その数わずか6万。兵力で劣る連合軍は知略と奇策で戦いに挑んでいく…。

三国志演義における見せ場の一つ「赤壁の戦い」を2部作で実写映画化した、ジョン・ウー監督作品。
「三国志」に思い入れの無い人でも、とても判り易く、かつ壮大なスケールで楽しませてくれる。

この前編では、蜀・呉の連合軍結成から赤壁の戦い直前までを描く。

本作の主人公はあくまでも諸葛孔明と周瑜の軍師のコンビだ。
その上、主要人物のキャラクターを紹介する作劇になっていて、戦い以外の歴史群像ドラマとしての見所も多い。

ジョン・ウー監督の演出も熱い。
孔明と周瑜が古琴の演奏を通じて意思を疎通する場面には「男の友情」が。
兄・孫策に対して劣等感を抱く孫権が虎狩りを通じて曹操打倒への闘志を燃やす場面に「兄弟間の愛憎」が。
呉を支配して周瑜の美しい妻・小喬を我が物にしようとする曹操の欲望を「許せない巨悪」とし、「男たちの挽歌」を初め、これまでの作品でジョン・ウー監督が手掛けた演出がピタリとハマる。

アクションも燃える。
監督お得意のガンアクションは当然ないのだが、関羽や張飛は万人がイメージする通りのキャラクターで、たった一人で何人もの敵兵をなぎ倒したり、人間離れした怪力を披露する。
ワイヤーアクションで敵が宙に飛ぶ様は豪快の一言。
趙雲が赤子を背中にかついで闘う決死の脱出劇にもジョン・ウー監督がこれまで銃撃戦アクションで魅せていた舞うような動きが取り入れられている。

前編の合戦シーンのハイライトは孔明の策、九官八卦の陣で連合軍が曹操軍を打ち破るところ。
八卦の陣はジョン・ウー監督がはじめて映像化。
CGによって大軍の陣形を俯瞰的に見せるシーンはダイナミックで迫力充分。
また白兵戦では生身のエキストラの兵士の動きの数が物凄い。
まるでアジア版の「トロイ」か「グラディエーター」か、歴史に残る戦いというモノを存分に楽しめる。

難点は一本の映画として中途半端なこと。
肝心の戦いが始まる前に映画は終わる。
「さぁ役者は揃った。後半をお楽しみに」である。
さらに言うと、小説などでは、主人公扱いされる孫権や劉備は存在感がとても薄い。
ただでさえ登場人物の多い三国志、赤壁の戦いに絞って描くためには英断と言えるが、もう少しなかったか?
「三国志」を知る人には不満が残っただろう。
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