えそじま

マルタの鷹のえそじまのレビュー・感想・評価

マルタの鷹(1941年製作の映画)
3.9
「一度だけ教えてやろう。相棒が殺されたら男は黙っちゃいない。君がどう感じようと関係ない、決して犯人は逃がさないんだ。それが探偵ってもんだ」


ダシールハメットの同名小説三度目の映像化作品。
マルタ騎士団ゆかりの彫像争奪戦、渦巻く欲望に飲み込まれた私立探偵スペードの華麗な立ち回り、巨匠ジョンヒューストンのデビュー作にしてハンフリーボガードを一躍トップスターにのしあげたハードボイルドの金字塔である。

陰影を強調した深みのあるライティングに象徴的なカメラアングル、リアリズムに徹したダークな世界観からノワールの源流とされ映画史に残る作品。「物を探す話は全てこの作品の亜流になってしまう」とどこかで聞いた事がある。

常にニヤケ顔を晒す狡猾な男に見えてその腹では相棒の死の真相追求に一貫、色香に惑わされず罪を償わせるというスペードの姿勢が男の美学を物語る。

煙草、酒、ファムファタル、財宝、殺人。危険な香りは男のダンディズムを魅せる小道具なんだ。
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