カタパルトスープレックス

ミニー&モスコウィッツのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

ミニー&モスコウィッツ(1971年製作の映画)
4.5
ジョン・カサヴェテス監督のメジャー配給作品。自主制作じゃないメジャー配給のカサヴェテス作品の中では『グロリア』(1980年)より好きかも。なにしろカサヴェテスっぽい。

カサヴェテス監督作品の男女は感情がぶつかり合ってうまくいかないことが多い。人間らしく「不安定な感情」の中で揺れ動く二人なのだから、それが自然なのだ。本作は『ハズバンズ』(1970年)と『こわれゆく女』(1974年)と併せて「結婚三部作」と呼ばれたりしますが、本作が一番ポジティブに結婚が描かれています。まあ、少なくとも最良の時期が切り取られている。

ミニー・ムーア(ジーナ・ローランズ)は不倫関係の男性(ジョン・カサヴェテス)との関係の終焉もあり、「不安定な感情」がグラグラ揺れている真っ最中。そんな中で出会ったシーモア・モスコウィッツ(シーモア・カッセル)はしがないレストランの駐車場係。果たして二人はうまくいくのか?という話です。

カサヴェテス監督作品では「不安定な感情」を生み出すために感情がぶつかるシークエンスはしつこいくらいに長い、そして暴力的。観ているこちらが疲れてくるくらい。最初がジーナ・ローランズと不倫相手役のジョン・カサヴェテスの絡みなのですが、もう感情の起伏が凄すぎて訳わからない。これがカサヴェテス監督特有のシネマ・ヴェリテの演出なんでしょうね。

次作の『こわれゆく女』(1974年)がカサヴェテス監督の最高傑作だとボクは思ってるのですが、メジャー配給作品ではこれが一番好きです。まったく違う方向性の作品なのですが、そういうのを連続して作れちゃうのってカサヴェテスが監督として一番乗りに乗っていた時期だったんでしょうね。