ROY

無言歌のROYのレビュー・感想・評価

無言歌(2010年製作の映画)
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中国、1960年。文革前の隠された悲劇。歴史に飲み込まれた名もなき民の姿に、人間の尊厳を見いだす慟哭と希望の詩。

それでも、人を想う。

■SYNOPSIS
1960年。中国西部、ゴビ砂漠。荒野に掘られた塹壕のような収容所に人々が囚われている。食料はわずかで、水のような粥をすすり、毎日の強制労働にただ泥のように疲れ果てて眠る。言葉や感情さえも失いかけた人々は、飢餓に侵され、次々と朽ちてゆく。ある日、上海から一人の女性がやってくる。愛する夫に逢いたいと、ひたすらに願い、収容所を訪れた女の存在は、やがて男達の心を変化させてゆくのだった―。

■INTRO
1956年。中国共産党は、言論の自由を保証し、党への批判を歓迎する「百花斉放・百家争鳴」を掲げた。しかし翌1957年、共産党は政策を急転換。党への批判を行った人々を「右派」と名指しし、「労働改造」という名の強制収容所に送り込んだ。毛沢東の陰謀とも陽謀ともいわれる「反右派闘争」である。

_1960年10月、中国西部、甘粛(ガンスー)省にある右派の収容所、夾辺溝(ジアビェンゴウ)労働教育農場の高台(ガオタイ)県明水(ミンシュイ)分場。

■NOTES
その原作となっているのが楊顕恵(ヤン・シエンホイ/ようけんけい)の小説『夾辺溝の記録』だが、藤井省三氏の論考「中国政治犯たちの収容所の記憶」(プレス資料収録)によると、その書が「小説」とされているのは、政治的配慮からのもので『夾辺溝の記録』で描かれている凄惨な描写は全く虚構ではないとのこと。つまり、パナヒの『これは映画ではない』の場合と同じような政治的弾圧の背景があって、「ドキュメンタリー」ではなく「小説」と銘打っているという事実自体が、現在もこの暗澹たる歴史について語ることが中国ではタブーであることを物語っている。 勿論、この『無言歌』自体、中国では公開されていない。

ワン・ビンはこの原作「小説」を題材として脚本を書き、その上で、生存者の証言を得るために、3年間に渡って中国中旅をして周り100人の生存者を探し出し、彼らからの証言を得て本作の脚本を完成させた。

http://outsideintokyo.jp/j/interview/wangbing/index.html

■COMMENTS
ロンジン(LONGINES)の腕時計

腹が膨れる草の実
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