ブラックユーモアホフマン

800 TWO LAP RUNNERSのブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

800 TWO LAP RUNNERS(1994年製作の映画)
4.7
良い!すごく良い!観て良かった!

すみません正直、廣木監督のフィルモグラフィの中でも全然気に留めてなかった作品なんですが今回、アーカイブで上映されるということで気になって観ました。すごく好きでした。

それには90年代日本映画の、フィルムの質感やカメラワークや役者の存在感と演技、劇伴や挿入歌などがトータルで醸し出す雰囲気が好きだという面もあるとは思う。例えばリアルタイムで観ていたとしてここまで刺さったかは分からない。でも例え白黒サイレント映画だろうと今観た映画は自分にとって新しい出会いに違いないのだから、この映画とも出会えて良かった。

川崎が舞台で、山手に住むエリートと下町に住むヤクザの息子が主人公。努力型の天才と生まれ持ったポテンシャルの高い天才。ニキ・ラウダとジェームス・ハントのような。
全く境遇の異なる二人が全く別の理由で陸上に打ち込む。それぞれにそれぞれのことを羨ましいと思っている二人が友情を育みつつ絶対に負けられない間柄になる。ベタだけどアツい。

長回しの多用が凄い。そういえば『オオカミ少女と黒王子』でもやってた。昔からやってたんだな。特に祭の櫓みたいなのを使ってるのはモロ同じ。
こだわりもあっただろうけど予算的な制約もあったんじゃないだろうかと勝手に想像する。

『二十歳の微熱』は未見だけど『渚のシンドバッド』っぽさも感じた。あとスポーツ青春モノなので武の『あの夏、いちばん静かな海。』や『キッズ・リターン』とかも。

瑞々しい。作劇上は必要ないと思われる間も多いけど、その無駄な時間もまた、むしろ無駄な時間こそが、青春だよなと思うから、結局無駄じゃない。

【一番好きなシーン】
・合宿の夜。コースに寝転がって、裸でプール。
・アイツの妹とラブホでカラオケ。その前にスナックで大人のカラオケのシーンがあるから、子供が大人の真似事してる感じがまた良い。何故か寂しい気持ちになる。