イザベル・ユペールは、狂った女の役が上手い。
ナチス占領下のフランス・ノルマンディー。
隣人の堕胎を手助けしたのをきっかけに、堕胎請負人としての裏稼業に堕ちていくマリー。
報酬での贅沢三昧の暮らしに我を忘れていく姿が恐ろしい。
更に娼婦の“仕事部屋”を提供し、ますます生活は潤うが、傷痍軍人として復員した夫との夫婦生活には、すきま風が吹いている。
歌手になるのが夢だったという彼女がはしゃぎながら歌い、踊る姿。
それは、抑圧された人生から解き放たれたいという、切なる願望にも見える。
彼女を告発した夫の憐れさも痛すぎる。
終盤は一転して、ノーメイクのマリーの心理が胸に迫る。
彼女の弁護士が呟く台詞、最後に出る字幕も重い言葉だ。