義民伝兵衛と蝉時雨

マンマ・ローマの義民伝兵衛と蝉時雨のレビュー・感想・評価

マンマ・ローマ(1962年製作の映画)
4.1
ローマの貧困層の人々の生活をクローズアップしたパゾリーニ監督の監督第2作目。当時のイタリアの格差社会の中での貧困層の困窮が映画として炙り出されている。元娼婦の女性とその一人息子の母子家庭にスポットライトは当てられる。最愛の息子の将来の為に泥沼から必死に這い上がろうとする母親の奮闘。母親のやや行き過ぎた突っ走った愛情も、それを愛として受け入れる息子。泥臭くも確かな愛情のある母子関係が微笑ましい。しかし、切っても切れない過去のしがらみ。青春期真っ只中の多感な時期の息子に突きつけられた現実。親の心子知らず。お互いの思いがすれ違う。

主演のアンナ・マニャーニの演技が兎に角素晴らしい。売春街での長回しのシーンは圧巻中の圧巻。ウジ虫の様なヒモ男を演じたフランコ・チッティの不快な存在感も作品に緊張感を与えていて素晴らしい。作品全体の乾いた空気感を極めつけるモノクロ映像美は「奇跡の丘」にも通ずる様な美しさ。パゾリーニ監督らしいメタファーも印象深く、「最後の晩餐」や「キリストの磔刑」などのキリスト教的構図は資本主義格差とキリスト教倫理が共存する矛盾に満ちたブルジョワ階級への皮肉とも受け取ることが出来る?乾いたローマの景色と貧困層の生活が胸に沁みるパゾリーニ監督初期作だった。