このレビューはネタバレを含みます
監督含め豪華キャストに目が行きがちだが、主要人物の俳優陣の演技が話にスッと引き込む素晴らしさ。
それだけに、2箇所ほど間延びする辺りが、演出として古臭く感じて白けるのが残念。
登場人物の考えや意図が伝われば十分で、印象つける見せ方をすれば良いのに長々とくどい。
一つは斎藤の妻ぬいと斎藤の別れから自刃したぬいの発見されるシーン。別れを惜しむ時にカメラを引いて見せる意味は?と考えさせられる。情報量のまだ少ない昔の活劇みたいな、構図に失敗した漫画を見てるみたいな印象。
また、小さい刃物で手首の静脈を掻き切っても直ぐには死なない。これは民間に伝えやすい絵を選んだ結果だろうと推測できる。確実に自刃するなら首だろうが、絵的に悲惨なことになるだろうことを考えると前者なのかもしれないが、白ける。
もう一つは、南部藩大阪蔵屋敷に吉村が帰参を願い出る所から切腹後までのシーン。
激しい戦闘で息も絶え絶えなのに、望郷の念を漏らす吉村を写し続けるシーンが長くて白ける。
どうにも、戦後間もない昭和の映画の印象が残る。
もう少しこれらの場面が短く印象的にできたなら、自分としては満点以上の感想だった。
忠義に生きる主人公とその家族愛を白身の演技で描く作品が、久石譲さんの音楽で更に心揺さぶりかけてくる良作。
『義』を厚く守り抜くことの意を考えさせられる。
中井貴一さんと佐藤浩一さんの組み合わせは最高だったし、架空の人物だが三宅裕司さん演じる主人公の幼馴染の野次郎右衛門とのやり取りは、作り手の意図通りに見る者に伝わると思う。
創作の素晴らしさを再確認できた。
*2010年頃までに何度も観ているが、配信で改めて観た日付を記録。