福福吉吉

壬生義士伝の福福吉吉のレビュー・感想・評価

壬生義士伝(2002年製作の映画)
4.5
幕末の京都で、吉村貫一郎(中井貴一)は新選組に入隊する。吉村貫一郎は、剣の腕は立つが金銭と命に異常なほど執着する新選組の中でも異質な存在であった。吉村のことを嫌う斎藤一(佐藤浩市)だったが、期せずして吉村と対峙し、そして新選組の将来を共にすることになる。

明治時代まで生き延びた斎藤一が吉村貫一郎を知る医者・大野千秋(村田雄浩)と出会い、幕末の吉村貫一郎の生き様を思い出す形でストーリーが進んでいきます。

主人公の吉村貫一郎は盛岡藩の下級武士だったが、ある事情により脱藩し、京都にて新選組に入隊しますが、脱藩したにも関わらず、盛岡を愛し、家族を愛する田舎者といった風体で、愉快で温和な人物であるように感じました。金銭に対する執着心を見せるシーンはクスっと笑ってしまう愛嬌のある感じで憎めませんでした。

それに対し、新選組の斎藤一は厭世的で命の捨て場所を求める人物として描かれており、吉村貫一郎の生き方に嫌悪感を抱き続けます。しかし、それと同時に斎藤は、吉村の存在と将来が気になっていたようにも感じました。真逆の生き方である吉村を否定したい気持ちと興味を駆られる気持ちが入り混じっていたのだと思います。

ストーリーが進むにつれて、吉村貫一郎がなぜこのような生き方を選んだのか分かっていき、それは非常に心に突き刺さるものがありました。武士として誇りに生きながらも家族を守り、愛し続けるために生き続けようと願った吉村貫一郎の姿を私はとても尊く感じました。

とても良い作品でした。また良い時代劇に出会えて幸運だと思いました。時代劇に興味のある方にはぜひ観て頂きたい作品です。

鑑賞日:2023年1月11日
鑑賞方法:BS/CS BS日テレ

余談ですが、私は以前、「最後の忠臣蔵」という作品のレビューで誇りに殉じた主人公の武士としての生き様を肯定するように述べました。そこからすると本作の吉村貫一郎の生き方は武士とはかけ離れているようにも感じます。しかし、吉村貫一郎の生き方にも非常に気高さを感じ、否定する気にはなれません。武士とはなんなのか、また分からなくなる作品でした。
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