大人の恋だと思っていたら、犯人を追い詰めるサスペンスに変わり…二転三転し、どこに着地するのかわからず、目が離せなかった。クールでハードなノワールでありながら、若い愛人の存在を認める妻も含めて、愛に迷う男と女のドラマだった。かなり好み。
主役の刑事のイヴ・モンタンが渋すぎる。クールで孤独なガンマン(刑事だけど)の初めての恋の相手は危険なファム・ファタールだった。
「ダーティハリー」へのオマージュで、たしかにイブ・モンタンとクリント・イーストウッドが重なる。
哀しい人生を背負った彼女の揺れる恋心に振り回される二人の刑事たち。
シルヴィアは、パイソンで犯人を追い詰めるイヴ・モンタンに惚れたのではなく、刑事という職業への敬意だったようにみえる。それも哀しい。
アラン・コルノー監督は、初期のこの長編から演出の作り込みが徹底している。静かに忍び寄る不安や、突き放すような画。どちらに転ぶのか見えないストーリー展開がうまいと思う。長尺の恋愛映画「フォートサガン」にも期待しちゃう。