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大いなる幻影 Barren Illusionのyzのレビュー・感想・評価

大いなる幻影 Barren Illusion(1999年製作の映画)
3.3
「二人が愛し合うという物語は、結局いつもセクシャルな欲求の成就か、あるいは家庭という制度への順応といった結末しかもたらさない。愛の果てには本当にそれしかないのだろうか?そうでもないだろう。というのが私の生きている実感であり、この映画の発想の原点となった。」

青山真治監督の『大いなる「映像=イデオロギー」』という文章が素晴らしく面白い。

「そうでもないだろう」に共感するしこの題材を黒沢清はどう撮るのだろうと思って観た。
しかし全く掴めない作品が展開される。
冒頭から、同じ言葉の反復や、幽霊の様に立つ人、飛び降りという黒沢的ホラー、サスペンス演出が展開される。既に分からなさを強く感じるが構図や人物の運動、フレームイン/アウトが凄く上手くて観てられる。しかし途中からは出来事自体の理解不可能さがより増していって今感じているのが快なのか不快なのかも分からなくなる。

作品全体に通底していてテーマにも繋がりそうなのは、絶対的・絶望的に他者と断絶していることだろうか。ほとんどの状況において会話は成立していないし親密さも感じなかった。しかし終盤を筆頭に二人が通じ合っているように見える瞬間がある。それが重要なのかなと思う。透明化や透明なのに触れられることは、社会は関係なく二人だけが接続されていれば良いという表象に見える。
また、生きること自体や映画鑑賞において意味から降りることへの意識も想像した。
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