山水亭独居坊

復讐者に憐れみをの山水亭独居坊のレビュー・感想・評価

復讐者に憐れみを(2002年製作の映画)
4.1
アイロニーというよりも、むしろユーモア、あるいはブラック・ユーモアと呼んだほうがふさわしいような効果を発揮している部分も、『エロ事師たち』のなかに多く発見される。
現実の醜悪悲惨が強調されればされるほど、そこにうごめく人間どもの言動の、何やらあっけらかんとした明るさや、また動物的な強靭な平静さが、作者の筆によって対照的に際立たせられるのだ。滑稽と、グロテスクと、哀愁とが一丸となったユーモアが、そこから生ずる。

         ーエロ事師たち(野坂昭如著)             新潮文庫解説:澁澤龍彦