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愛のお荷物のodyssのレビュー・感想・評価

愛のお荷物(1955年製作の映画)
4.0
【面白い!】

DVDにて。
最近、昭和30年代の邦画に注目しています。邦画の全盛時代、結構掘り出し物があるような。

この映画もその一つ。
今でこそ日本は少子化が問題視されていますが、過去をたどるなら逆で、「狭い国土に人口ばかり増えてどうするんだ」という時代が長らく続いたわけです。

戦前、そして戦後も昭和30年代までは北米や南米に移民を送り出していた日本。
戦前の満洲建国だって、人口過剰対策という面があったことを忘れてはならないでしょう。

この映画が作られたのは昭和30年ですが、作品内で「日本の人口は現在8千9百万人、1億人突破は時間の問題」と言われています。1億3千万まで行って、それが減り始めているものの、いまだに1億を越えている今の日本は、昭和30年の日本人からすれば「なんで少子化が問題なんだ」というところかも知れません。

閑話休題。
この映画は、厚生大臣を務める50歳くらいの代議士(山村聰)が、国会で産児制限をいかに行うべきかで野党議員との間で論戦を繰り広げるところから始まります。

厚生大臣には二女一男があります。長女は結婚して6年になるのに子供に恵まれない。長男と次女は目下独身。ところが・・・

時代の問題をとりこみながらも、それを巧みな喜劇に仕立て上げた川島雄三監督の才気に注目すべきでしょう。

各役者の健闘ぶりにも注目!

大臣役の山村聰は鼻下にひげをたくわえていますが、ちょっと夏目漱石に似ている。

その妻役の轟夕起子がふくよかな中年美人で、しかも・・・

長男役の三橋達也が、ちょっと頼りなさそうながら意外な才能を見せるという役どころにぴったり。

次女役の高友子は、清楚な美貌が光っています。1934年生まれで、この『愛のお荷物』は映画出演第二作。40本近い映画に出演して1960年を最後に引退(?)しているようですが、その存在があまり知られていないのは作品に恵まれなかったためでしょうか、惜しいことです。

のちに石原裕次郎夫人となり引退した北原三枝が、ここでは有能な大臣秘書として出ています。「女子大を一番で卒業して英仏語に堪能」という役どころが、きりりとした表情に似合っていますね。しかも単に仕事が出来るだけでなく・・・

何にしても、佳作ですよ! 未見の方はぜひ!
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