ジョン

砂の女のジョンのレビュー・感想・評価

砂の女(1964年製作の映画)
4.7
超好みのタイプの映画やった。邦画の生涯ベストに入りそう。

まず、砂の描写が見事。流動する砂、崩落する砂、堆積する砂。モノクロ映画で景色が一面砂なら退屈な作品になりそうやけど、映像の切り取り方が素晴らしく、まるで水のような美しい砂漠が画面を支配していた。その圧倒的な美しさには逆に恐怖すら感じた。
時折挟まれる虫の接写や、不安を煽る不気味な音楽・効果音がこれまたツボで、我らがデヴィッド・リンチに通じるなと思った。村人がお面を被って穴の上からどんちゃん騒ぎしてるのも超サイケで超最高。

そして、本作を語る上で避けて通れないのが岸田今日子の怪演。穴の底にある一軒家に住む未亡人の女性を演じる。物静かで黙々と砂を掻き出す彼女には掴み所がなく、上裸で眠ったり主人公の脇腹をつついたり、無邪気さや妖艶さも纏う。主人公と彼女が身体を交わらせるシーンは白眉で、やけに長いけど見入ってしまう。

話も当然面白く(鑑賞後に原作も読みました)、適応とか承認欲求とか倫理観とか社会とか、あらゆる語り方ができそうで、映画友達、なんてのがいたら語りたいなあ。ああ傑作。
ジョン

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