素敵だ。異星人なので喋れないジョー・モートンのそばにいると皆が饒舌になり勝手に喋りまくって彼は黙っててもいつの間にか仲良くなってる、そういう役がすんなりと合う味わいと可愛らしさがジョー・モートンにある。彼が街に貼られたポスターの歌手に一目惚れし、彼女とベッドでキスするシーンがあまりにも純粋で涙出た。
インディペンデント映画らしいオフビート感に溢れてるが、ハーレムが舞台でさまざまな人種の人々や底辺で生きる黒人の少年たち、ドラッグで少年らを搾取する白人資本家などが描かれる。そもそもモートンは故郷の星でも奴隷で、白人の姿をした奴隷狩りの男二人に追われている。奴隷博物館に展示された絵を指差し自分を指差して、同居する男の子に示すシーンもある。
ハーレムの人々も大変味わい深く人情味があり、アーケードゲームの80年代前半らしいプレイ画面と音、随所に使われるスチールパンの音が楽しく、奴隷狩りの白人二人と闘うシーンの流れるようにゆったりと同期される殺陣も好い。
モートンには掌で触れるだけで色んな機械や怪我を直せる力がある。また自分の片目を繰り出して植木鉢に置くと肉のついた目玉が定点カメラとなる。目玉を外して他の男に見せると、モートンが目撃したドラッグ中毒で死んだ少年の映像が再生される。ちょっと高野文子『奥村さんのお茄子』のうどんを思い出す。予算無さそうな作品だけど色んなアイデアが活きてて楽しい。
本作のポスターは昔からユーロスペースで見てて勝手にドイツ映画だと思ってた。いつの間にか再販されDVDジャケットデザインはダサくなったが内容は伝わりやすくなった。