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乱暴者のadeamのレビュー・感想・評価

乱暴者(1952年製作の映画)
3.0
スペインの鬼才ルイス・ブニュエルがメキシコ時代に撮った作品で、クセの強いキャラクターがあふれているものの、風変わりな演出は少なく、作風としては割と真っ当なブニュエルにしては異色のドラマです。
頭は弱いが腕っぷしは強く乱暴者とあだ名される男が、集合住宅で暮らす貧しい人々と、彼らを立ち退かせようと策略を巡らせるオーナーの間に挟まれる姿を描いた物語で、メキシコ時代の作品に共通するネオレアリズモ風の息苦しさに満ちていました。
男はオーナーの妻である妖艶な悪女と分厚い肉が焼ける間に体を重ねる一方で、貧しいながらも純粋な女性ともロウソクの火が消える間に愛の言葉を交わします。
そんな板挟みの中で器用に立ち回れるわけもなく、あえなく破滅していく展開のやるせない哀しみが良かったです。
他のブニュエル作品のような個性には欠けていますが、娯楽性の高い素直なストーリーも描ける巨匠の確かな手腕を確認できました。
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