このレビューはネタバレを含みます
情緒がある歴史映画。うまく言えないけどなぜか心に残る。
面白いと思うのは、スパルタカスが全く超人、英雄みたいな描かれ方をしていないところ。感情をあまり表に出すキャラクターでもなくって、反乱軍のリーダーには見えない。ただ、理不尽な暴力や挑発に静かに怒りを表す彼にはむしろ強く共感できる。
序盤でスパルタカスと決闘させられた黒人の剣闘士が、スパルタカスにとどめを刺さずに見物席の貴族に槍を投げて襲い掛かるシーンはかなり衝撃的。多分あの黒人はセリフが一言もないし、表情も変えないのに、何が言いたかったのかストレートに伝わる。
テーマとしては、公民権運動とかの背景もあってスパルタカスの乱を取り上げたのかと邪推。「負けることが分かっていても奴隷を地上から消すために戦う」みたいな綺麗な思想は、たぶん史実とは全く違うんだろうけど胸に迫る。
キューブリックはこの作品が嫌いらしいし、確かに綺麗すぎる気もするけど、それでもキューブリック映画は沈黙は金って価値観にじんでいる気がする。