今作の主人公はジーンといってもいいくらい。20年前、10年前と過去を明らかにし、潜在能力が無限であるがゆえに、「心」が分断するに至った訳を壮絶に描く。プロフェッサーが彼女のためを思っていたのも本心だし、とは言えありのままで生きることを許されなかったジーンの悲しみも、コントロールされることへのフェニックスの怒りも、強く伝わってくる。
「どちらも間違ってない」「悪意からの行動ではない」というのは、人類からミュータントへの態度や、人類とミュータントの対立にも言えるのだろう。キュアの開発者が息子の穏やかな生活を願ったのも嘘ではないし、人類が圧倒的能力を持った存在を恐れることなく彼らと共存する難しさも容易に想像できる。
一方で勝手に憐れまれ、「治療」を良いこととされる憤りも当然のことだろう。マリーに戻る選択をした彼女を愚かだと断じることはできない。
迫力満点な橋のシーンから終盤のバトルにかけては、見応え十分ね。透過と破壊のオニごっこ、元クラスメートとのバトル、父親を助けに「飛んで」来る息子、冒頭の演習から繋がるチームプレイ、そして闇堕ち覚醒した彼女の桁外れな力。ミュータント達の特性が効果的に各見せ場を作り出す展開は見事だわ。
それでもこの争いには不毛さがやはり色濃い。チャールズエグゼビアを見送るとき、ストームが学園の皆にかけた言葉「彼の理想は世界がひとつになること」それを夢で終わらせないための闘いなんだろうけど、ひとつになることが必ずしも良いことなんだろうかと、どうにもこうにもやるせない。
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